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ポケモンボックス②

ポケモンボックス②

下山後想定の話。
ポケモンボックス①をまじめに妄想したやつ。

自分のボックスに、捕まえた覚えのないポケモンが6体、並んで入っていた。
よく見知った顔だった。何度も何度もバトルした顔ぶれたち。
ボールから出してみたら案の定、腐れ縁のあいつの手持ち達だった。

ポケモンセンターの前で大人しく6体並んでぼくの指示を待つ彼らに、どうして自分のボックスにいたのかと聞いてみた。
けれど、誰もぼくと目すら合わせようとしない。
気不味そうに目を逸らすばかりで、教えてと強めに命令しても一向に教えてくれる様子はない。
ものすごく嫌な予感がした。

ピジョットに道案内を頼み、できる限りの速さで飛んで帰る。
口に出して伝えたことはないけれど、もしも自分になにかあったら手持ちは全部あいつに託すつもりだった。
ぼくが考えることは、あいつも考えそうなことだ。
最悪な予感に囚われたまま、無限とも思えるほど長い時間を飛び続ける。
実際は半日くらいだろうか。
ようやく地面に降り立ったとき、あたりはもう真っ暗だった。

降り立った先はトキワジムの裏手だった。
てっきり彼の家に案内され、そこで残酷な事実を告げられるんだろうなと思っていたぼくは、少し面食らった。
ジムにみんな集まっているのだろうか?とジムの方を見やるも、真っ暗で中に人がいる様には見えない。
本当にここで合ってる?と、ここまで運んできてくれたピジョットに目をやると、なぜか嬉しそうに一鳴きして、ぼくを飛び越えて飛んでいく。
慌てて行き先を目で追うと、片手を上げて歩いてくる人影があった。

「よぉーッ!
意外と早かったじゃねえか、レッド!」

羽音が向かった先には、手持ち達の本当のご主人がいた。
夜闇の中をしっかり歩くその人影。
ちゃんと足もついてるし、どこかケガをしている様子もない。元気そのものだ。
ピジョットがその横に降り立つと、手元のボールから次々と手持ち達が飛び出し、彼の周りに集まっていく。

「グリーン……」

「……お前たちご苦労様!悪かったな。
あとでご褒美やるからな!
ピジョットも偉いぞ!あれ?
なんか濡れてんな、後で毛繕いしような」

「グリーン!」

「……っと!なんだよ!レッド!」

手持ちを一体ずつ労う彼は、こちらを胡乱な目で見ていた。
とにかく言いたい事が山ほどあって、何から言ったらいいのか分からなかった。
黙っていると、彼は少し気まずそうに頬をかきながらこちらに近づいてくる。

「……ボール」

手の届く距離まで近づいてきた彼の言葉に従って、ボールホルダーに手をかける。
とっとと外して投げ返してやりたかったのに、手が震えて思う様にいかない。

「……外すな?」

一向にボールを外せないぼくに焦れたんだろう、彼はバツが悪そうに目を伏せながら自分のボールをぼくのホルダーから回収した。
ボールを回収した後、手持ち達を次々とボールに戻していく。
その横顔をじっと見ていると、その視線に気付いた彼は、一瞬こちらを見て、何か言いたそうにした。
結局彼は手持ちを戻す間、何も言わなかった。
全てを戻し終えてようやく、彼はその重い口を動かした。

「……悪かったよ」

ぼくに聞かせる気なんてない、小さな声で告げられたそれに、ふざけるなと思った。
……悪いと思ってるなら、どうしてこんなことをした。
ここにくるまでの間ずっと、冗談であってくれと願い続けてきた。
それと同時に、こんな冗談に大事な手持ちを使うような奴じゃないと知っていたから絶望していたのに。

「……なんでこんな事したの」

自分の思っている数倍低い声が出た。
彼は急に声を発したぼくに一瞬驚いた様だったけれど、ぼくが怒っていることを見て取ると、少し苛立った様子でこちらを見た。

「……一週間後はなんの日だよ」

「一週間後…?」

予想外の問いかけに思わず聞き返す。
彼はそれが気に食わなかったのか、腕を組んでこちらをにらんでくる。
いらだちを隠す様子もない。

「……おばさんの誕生日だよ!」

しばらくの沈黙の後、彼はため息交じりに正解を教えてくれた。
そのまま言葉を続ける。

「……今年の誕生日は帰ってくるかなって、おばさんと話してたんだよ。
そしたらさ、おばさんさ、もしレッドが帰ってきたら天変地異が起こるわねって、笑ってたんだよ。寂しそうにな。
思わずオレ、今年の誕生日プレゼントはレッドにするって言っちまってさ。
……だから、帰ってくる可能性が一番高い方法を取った」

実際、帰ってきたもんな?と彼は肩をすくめながら言った。

「だからって…!」
やっていいことと、わるいことがある。


「……離せよ」

気づいたら彼につかみかかっていた。
ぼくがどれだけ肝を冷やしたか、ここにどんな思いで来たのか。
こんな方法取らなくても、連絡を取る手段を君なら思いついたんじゃないのか。
言いたいことは山ほどあるのに、言葉にならない。
喉の奥にはりついたみたいだった。

「っ!ぼくが!どんな思いで!」

なんとか声を出す。
どれだけ死にそうな思いでここに来たか、君は分からないからこんなことができたんだ!
そう告げてやるつもりだった。

「お前が言うなよ…っ!」

目の前の彼が、鋭い声を上げた。
静かな夜の街に響いたその言葉が、頭の中に反響する。

「普段、人にさんざん心配かけておいて、自分がする側になったら怒るのかよ?なあ!」

言い返せなかった。
彼の目にかかった前髪の向こうから、険しい目がこちらを射貫いていた。
胸の奥がぎゅっと縮まる。
目の前の彼の視線が、山を下りた日を思い出させる。
あの日は、ひたすら色んな人に心配したんだからと怒られた。みんな、今の彼みたいな目をしていた。来る人来る人に叱られていく僕の隣で、彼は僕が怒られている様を見てバカみたいに笑っていた。
だから、彼はぼくのことを心配してなかったんだと思っていた。
そう思っていた自分が、どれだけの心配を彼にさせていたか——わかった気がした。
ぼくが思うことは、彼も思うに決まっていた。
ただ、彼はそれを言わなかっただけだった。

「……もういい」

ため息交じりに彼はつぶやき、力の抜けたぼくの手を振りほどく。
くしゃくしゃになった上着を整えながら、彼は続ける。

「説教するために呼んだんじゃねえし。
 おばさんの誕生日には顔出せよ、じゃあな」

こちらを見ずに、彼は短くそう告げる。
元来た方へ歩き出す彼を見て、自然と声が出た。


「連絡しなくて、ごめん」

「心配、かけた」

「……次は、行き先伝える」


本当はもっと言葉をつくすべきなんだろう。
でも、この時のぼくにはこれが精いっぱいだった。

「……おばさんに言えよ、それは」

彼は背を向けたまま、ぶっきらぼうに答えた。
ただ、その場で立ち止まってはくれている。
ぼくは、数歩先にいた彼の隣まで歩いた。

「……そうする」

ぼくがそう言うと、おばさん驚くだろうなと言って彼は小さく笑った。畳む
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