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ぽこあ軸 妄想文

ぽこあ軸 妄想文
妄想全部盛った。悔いはない。

◾️
日曜の昼下がり、電話が鳴った。

『よお、レッド』

「…グリーン、どうしたの?」

電話をかけてきたのは幼馴染のグリーンだった。
彼とのやりとりは、お互い電話に出れない事が多いのもあって、メールな事がほとんどだった。
そんな彼が電話をかけてきたことに少し驚きつつ、要件を聞く。

『オレさ、チャンピオンやめてじいさんの研究継ごうと思ってさ』
『だから倒しに来てくれよ』

遊びの約束をする時と同じトーンで切り出された話題に少し面食らう。僕が断るなんて微塵も思ってない声だ。
事実僕は断れなかった。僕が断ったら、別の誰かが彼を倒すだけだ。それが分かっているから断れない。
そして、彼はその事まで分かり切った上で言っている。

「……わかった。いくよ」

ため息交じりに返事をすると、電話の向こうで彼が笑う声が聞こえた。

『おー待ってるわ』

僕は電話を切って、カントーへ帰る準備を始めた。
随分と軽いやりとりだな、と他人事みたいに思った。



 
◾️
「よおーチャンピオン!
しっかりやってるか!」

「……見てわからない?」

ある日の夕方、仕事部屋に乱入してきた元チャンピオンに僕は白い目を向けた。
机の上にはありとあらゆる書類が山積みになっている。
全部広報と治安維持に関する書類だ。目を通しながらうんざりする。

彼とのチャンピオン戦は楽しかった。
グリーンの引退は決定していたので、エキシビジョンマッチのような形で大々的に行われた戦いは、僕がギリギリで勝って終わった。
まあ、そうなるようにグリーンが調節してた感が否めないけれど。
そうやって僕は久しぶりにチャンピオンの肩書きと、数多の仕事を背負うことになった。
仕事は大きく分けて2つあった。カントーの顔としての広報活動、カントーの治安維持活動。
治安維持活動はまだ良かった。見回りや、通報があった場所に向かって対処するといった活動が主だから、量の多さ以外で特に困ることはなかった。
問題は広報だ。人前での活動なんてやってこなかった僕に、急に広報をしろと言われても困る。
おそらくだいぶ減らしてくれている(多分代わりにグリーンの方に依頼が行っている)のだろうけど、それでも僕は困っていた。
今までチャンピオンだった人は、どうやってこの量をこなしていたのか本当に分かりそうにない。

「グリーン、どうやってコレこなしてたの」
「そりゃ、優秀な他のやつに丸投げだよ」

これとかこれとか、お前以外に回せるだろと、目の前の書類があっという間に仕分けられていく。
彼が手を止めた時には、僕の目の前の書類は実現可能なラインの数にまで減っていた。
完全に盲点だった。歴代のチャンピオンはこうやって仕事を振り分けてこなしていたのかと驚きの目で彼を見ると、苦笑気味に彼は笑った。

「お前一人で全部やる必要ないんだよ、もうちょい周りを頼れ」

そう言って彼は、仕分け終わった後の書類をペラペラと眺め始めた。
僕は手持ち無沙汰になって、ふと思ったままを口に出す。

「……グリーンの方はどうなの?研究所また開けるんでしょ?」

チャンピオン戦の後、彼に理由を聞いたことを思いだす。
『マサラの研究所さ、じいさん引退してから閉じっぱなしだろ』
『閉じたままなの、なんか気に食わなくてさ』
そう言って、彼は手元のボールをじっと見ていた。

僕もあの時の彼と同じように、自分のボールに目を落とす。
彼はそれを横目で見て気づいていたようだけど、特に何も言わないで続けた。

「あー、うん。まあぼちぼち。
もうすぐ開けられそうだから、そんときゃ遊びにこいよ。
まあそんなヒマねえかも知れねえけど」

彼は書類を流し見しながら僕に返答する。
つまりはヒマがないということか、と僕は遠くを仰ぎ見た。
彼はそんな僕を見て元気づけようと思ったのか、書類を持っていない方の手で背中を叩いてきた。

「ま、でも意外としっかりやってて驚いたぜ!
オレ、正直3日でやめるかなと思ってた。
やるじゃねえか」

じゃあそんなやつに譲るなよと思ったけど、口には出さない。
書類を流し見する彼をじっと見ていると、彼はある一枚で視線を止め、その書類を僕の目の前に掲げた。

「あ、これ。
お前このイベントの時、手持ちどうするんだ?」

リニア鉄道の記念式典への参加依頼だった。式典のイベントとして、僕と小さい子で勝負するらしい。
彼は、僕がちゃんと場をわきまえた選出をしているか確認したいんだろう。

「ピカチュウに頼むつもりだけど」

そういうと、呼ばれたと思ったのか部屋の隅で寝ていたピカチュウがこちらに走り寄ってきた。
それを片手で捕まえた彼は、撫でながら無神経なことを言う。

「いいじゃねえか!
お前のことだから本気の6体で挑むと思ってた!
ピカチュウに任せときゃ安心だな」

なーピカチュウ?と目の前で楽しそうにじゃれあう相棒と幼馴染が憎くてたまらない。
子ども相手に大人気ないことをするわけないだろと文句を言うと、どうだかな?とさらにピカチュウと遊び始めた幼馴染を見て、我慢の限界が来た。

「仕事の邪魔するなら帰ってくれない?」

「はいはい、邪魔して悪かったよ。
思ったよりちゃんとやってて安心したぜ」

「……君がそうさせたんだろ」

「……ま、そうだな
あ、あとお前これいい加減受けてやれよ」

彼はそう言って、懐から一枚の手紙をとりだした。

「またお前ん家のポストに入ってたぜ。取材の依頼。
……これで何通目だ?オレがジムリーダー成り立ての頃から毎月送られて来てたから…」

そういって指折り数えて、途中で面倒くさくなったらしい。
「とにかくもう何十年も依頼の手紙送ってんだぞ!
チャンピオンになったんだし、流石に受けてやれよ」

差し出された手紙を、苦々しく受け取る。
「……返事出しとく」

「おーそうしろ!
んであとこれ」

まだ何かあるのか?と彼の方に向き直ると、彼は鞄から一冊のアルバムを取り出した。

「なにこれ?……昔の写真?」

「そう。話すことに困ったらそれ使えよ」

僕が首を傾げると、彼はページをめくって一枚の写真を取り出した。
僕が初めて殿堂入りした時の写真だ。リーグ前でオーキド博士と一緒に並んでいる。

「たとえば、初めて殿堂入りした時はどうでしたか?って聞かれたら、この写真出して笑っとけよ。
そしたら相手、勝手に補完してくれっから」

彼はそうやって使い方のデモをした後、そっと写真をアルバムに戻してから僕に渡した。

「じゃ、オレ帰るわ
チャンピオン頑張れよ」

「うん、またね」

彼は片手をヒラヒラさせながら扉の向こうへ消えていった。

アルバムには僕の半生分の写真が入っていた。僕と、僕の手持ちたちの写真が隙間なく入れられている。
彼が撮ったものだろうか。その中に、彼の写真も紛れて入っていた。
意図してなのか、間違えて入ってしまったのか分からなかったそれを、少しだけ迷ってから取り出してポケットにしまった。
そのあと一通りアルバムを見た僕は、取材依頼への返事をようやく書き始めた。



 
◾️
「よお、レッド。
お前、オレに言うことあるよな?」

日曜日の昼下がり、ここオーキド研究所に訪れた僕は、何のことやらととぼけた顔をしてやった。
それが気に食わなかったらしい。研究所の玄関口で、彼は僕への小言をさらに続ける。

「おまえ!チャンピオンやめるの早すぎるだろうが!オレがせっかく譲ったのに、三ヶ月でやめるって、お前!お前なあ!」

「後任はヒビキだから大丈夫」

「お前よりしっかりやるだろうよ!
そうじゃなくて、お前まで幻呼ばわりされてんだぞ!もうちょっと頑張れただろ!」

「無理」

「…………」

彼は盛大にため息をついて、研究所の中へ立ち戻り、そのまま応接コーナーのソファへ座った。
僕も彼に引き続いて中に入って、テーブルで挟まれた対面のソファへ腰掛ける。

「あと、なんだこれ」

彼はソファの横にあった雑誌ラックから、一冊の雑誌を取り出した。
僕が取材を受けた誌面のある雑誌だ。
彼が何を言いたいかは分かっている。

「おまえ、オレの話しかしてないじゃねえか!!!」

「盛り上がったよ」

「そりゃ良かったな!
お前オレがせっかく、せっかく話のネタにってアルバム用意してやったのに、それ使わないでオレの話ばっかするって何だよ!なあ!」

「いや使ったってば」

「は?」

「アルバムの中に入ってたんだよ、君の写真。
それ使っただけ」

「…………いや、だとしても他の写真選べよ!」

「僕の勝手だろ」

「…………」

彼は盛大にため息をついて、雑誌を元に戻した。
取り合う元気もなくなったようだ。
僕はここでようやく本題に入る。

「で、今日はどこ調査行くの?」

ポケットから出したチラシをヒラヒラとさせながら、彼にお伺いを立てる。
調査ボランティア募集!と誌面には文字が踊っている。発行主はここ、オーキド研究所だ。

「……オレは確かに調査のボランティアを募集した。
でもお前みたいなやつを求めてたわけじゃない!」

「募集要項どおりでしょ、ポケモン好きで、コツコツ記録するのが好きな人」

「……あと、日中連絡がつく方って書いてんだよ!お前ちゃんと読んでねえな!」

そう言われて改めてチラシに目を通すと、小さく『トキワの森』と調査場所の記載があった。
僕は開き直り、調査の話を続ける。

「トキワの森?久しぶりに行くなあ」

「おい無視すんな!
お前さ、チャンピオンやめてボランティアって……何考えてんだ、ほんとに」

これ以上の小言は時間が勿体無いなと思った僕は、彼が用意しているであろう調査用の装備をソファから立ち上がって探し始めた。
目当てのものはすぐに見つかった。研究所奥の机の上に一式用意されていた。
マッピング用のボード、あなぬけのひも、双眼鏡。他、いざという時の薬類。
それを抱えて持ち出そうとすると、彼は諦めたようにぶつくさ言いながら、用意されていたもう一つのボードを持って出口へと歩いて行く。

「お前、勝手なことしたら置いていくからな」

そう言って、置いていった試しがないじゃないか。
扉口に突っ立って、こちらをじろりと見てくる彼を見て、そう思う。

「いいよ。勝手についてくから」

ぼくたちは調査道具を持って、研究所から飛び出した。

終わり
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